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本稿は平安歌謡である催馬楽の深層構造を解読し、『源氏物語』の新たな読みを提示しようと試みた。特に催馬楽の「東屋」の深層を<人妻禁忌>を中心に分析し、老女と貴公子の逢瀬といわれる源典侍物語と連動していることを明らかにした。 しかも、従来の研究では指摘されていない夕顔、末摘花、朝顔それに朧月夜物語での「東屋」引用を明らかにし、それぞれの短編物語が表現類似などの言葉の次元をこえて、「東屋」の深層構造を媒介に光源氏の物語をつなぎとめている緊張的かつ動的な『源氏物語』の世界、仕組みを解明した。 まず、本稿は「東屋」での「門」の開閉のイメージ、古代の発想である<人妻タブー>、そして<葎宿>の<零落の女君>の類型に注目した。「東屋」引用が源典侍物語を原點とする、禁忌の恋に惹かれていく光源氏のありようを照らし出すことや、「東屋」引用の場に<葎宿>の<零落の女君>のイメージがあることを明確にした。 葎宿は光源氏にとって藤壷に代わる女君の居場所であり、葎宿の女君は藤壷への光源氏の思慕を呼び起こすものであった。言い換えれば、女君に葎宿のイメージが宿る限り、光源氏の藤壷への思慕は照らし出されるはずである。しかも、葎宿の女君のイメージは、「東屋」引用と照応して、禁忌の恋の逢瀬、それを志向している光源氏のありようを呼び起こす。その重層により、物語の深層では藤壷と光源氏の禁忌の恋の関係が常に呼び出されることになった。 このように禁忌の恋に絡まれていく光源氏のありようを照らし出す文脈の上で、夕顔․末摘花․源典侍․朧月夜․朝顔物語は連動している。従って、五人の女君の物語は「東屋」引用を媒介に相互関連しあいながら一回的な挿話的物語の域を越えて、光源氏の物語をつなぎとめていくのであった。「東屋」の深層構造は注目に値すると思われる。