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「血の涙」「紅の涙」はもともと中国の漢語である。これらは、中国にとど まらず、韓国や日本の古典文学のなかにも用いられている語でもある。だが、これらが中国の古典文学に見られる「血の涙」、「紅の涙」の意をそのまま、用いられているのかどうかについて考えてみると、必ずしもそうだとは思う。ということで、本稿では平安かな物語における「血の涙」「紅の涙」を中心として考察した。研究方法としては、平安文学の中、物語を中心として「血の涙」「紅の涙」の用例をできるだけ拾い、その用い方の特徴に焦点をおいてみた。そのため、かな物語における「血の涙」「紅の涙」と和歌(八代集․私家集)、漢詩集に分け、平安かな物語のなかの「血の涙」「紅の涙」の用い方との相違点あるいは共通点は何であろうかについて考察させていただいた。 その結果、「血の涙」は用例も少なく、平安時代の人々の心をつかめず、 早くからその姿を消した。一方、「血の涙」と同じ意を持っている「紅の涙」は平安かな物語のなかにちりばめられていることが分かる。特に、和歌の場合「紅の涙」は恋の場面で「嘘の涙」などとして用いられている。つまり、「紅の涙」は中国からの影響はあったものの、すでに日本化されつつあったのである。