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『和英語林集成』に見られる「ひと」を表す漢語系接辭 -「英和の部」における增補樣相-  本稿では、『和英語林集成』の「英和の部」の譯語に見られる、「ひと」を表す漢語接辭について考察してみた。これらの漢語系接辭が重版ごとにどのような譯語のなかに用いられ、原語との關わりの上でどのような特徵を見せているかということを、主に譯語の增補樣相を通じて考察した。「英和の部」は「和英の部」に對する索引として付け加えられたようなものであるが、「英和の部」の譯語には、「和英の部」より先に收錄されたものや、「和英の部」にはどの版になっても收錄されなかったものまで含まれているので、この時代の日本語を知るための「和英の部」を補完する日本語資料としての意義が認められている。特に、再版(1872)・第三版(1886)の重版ごとに多くの改訂・增補が行われたため、新しい時代に卽応して日本語として定着をみた語彙が新たに收められていく樣相が見られるという点で資料的価値が高い。第三版になると、日本語、英語の双方において一万語以上も追加されているが、その大多數は漢語である。その漢語のなかには、「-者」「-人」「-師」「-家」など、「ひと」を表す漢語系接辭を含む三字漢語も多く見られるが、これは、幕末・明治期の文明開化に伴って、近代的な職業の種類が飛躍的に增加したことを反映しているのであろう。本稿では、そのなかでも、最も多く見られる「-しゃ(者)」「-にん(人)」の兩者に重点を置いて、主に原語との關わりにおける、それぞれの增補譯語の特徵を中心に記述した。「漢語+しゃ(者)」は、初版の譯語のなかには八語しか見えないが、第三版になって急激に增加している。その原因としては、再版以來一四年間、譯語として定着した二字漢語を大幅に採り入れたことと、語基を軸とした原語のパラダイムに對応する新しい日本語のパラダイムのなかで、「-しゃ(者)」が多用されたことが考えられる。「-か(家)」は、主に、サ変複合動詞を造らない名詞性の漢語語基に下接するという点で、「-しゃ(者)」との違い見られる。「漢語+~にん(人)」は、「漢語+~しゃ(者)」のように第三版で急增したわけではなく、初版から多く見られ、再版・第三版において徐々に增補されており、また「和語+~にん(人)」も初版・再版・第三版を通して比較的多く用いられていることから、幕末・明治初期から譯語のなかに活發に用いられていたことが推察出來る。一方、「-し(師)」は、「和英の部」の見出しには、主に二字漢語のなかに見られるような「teacher」の意としか譯されていないが、「英和の部」には、「maker」の意味として捉えられることが多く、原語において製造・技術分野の人を表す場合は、その譯語として「-し(師)」が当てられるという傾向が著しい。