ABSTRACT

労働組合法案に対するこれまでの評価は、農商務省案は取締的で内務省案は進歩的であり、労働組合を中心に位置つけようとしたものであるというのが通説だった。しかし、このような見解には内務省警保局の労働運動に対する政策と矛盾してしまう結果になる。つまり、警保局は諸社会運動に対して抑圧的な取締策を講じているにも関わらず、労働運動にだけ宥和策をとったことになるのである。もし、それが事実であるならば、そのような政策をとらざるを得ない根拠を提示しなければならない。しかし、これまでの研究史の中ではそのような説明は皆無である。 そこで本論文は日本で労働組合法案が初めて提案された臨時産業調査会における議事録を再検討すると同時に内務省と農商務省官僚の国家支配秩序再編構想の違いを明らかにすることに焦点を当てみた。その結果、内務省警保局は労働運動を社会問題·思想問題として認識しており、社会主義運動から労働運動を分離し、国家の統制下において、適当な保護と相当の監督を行うことを通じて労働者意識の喪失を狙ったのである。一方、農商務省は労働運動を産業上の問題として発生したものと認識し、一国産業の健全な発展のため労働組合法案を立案している。このような農商務省の立場は資本家の利益を代弁しているものであると言えよう。 このように通説に対する修正は、第一次世界大戦以降、日本の国内外的な諸変化に対応できる新しい支配秩序の構築を試みる内務官僚の国家支配構造再編の構想を分析するためのきっかけを与えてくる。

KEYWORD

The Labor Union Law, the Department of the Interior, the Department of Commerce and Agriculture, the temporary industrial an investigating Committee, rule structure of state

REFERENCES(1)open

  1. [jounal] / 1929. / 組合法案の沿革